ニュース
ニュース2026.8.25
【帰朝報告:中川】フランス・リヨンに見る地域イノベーション・エコシステム(2026年8月16日~8月21日)
東北大学病院産学連携室・臨床研究推進センターバイオデザイン部門では、医療現場の課題を起点とした研究開発、産学連携、社会実装を国内外のパートナーと進めています。このたび、2026年8月16日から21日にかけて、フランス・パリおよびリヨンを訪問し、大学、大学病院、研究機関、産業クラスター、Living Lab、スタートアップ・エコシステム等の関係者と意見交換を行いました。
今回の訪問では、特に「なぜフランスの地方都市に、世界的な産業・研究クラスターが形成されているのか」、そして「そのエコシステムと、今後どのような国際共創の可能性があるのか」という視点から、リヨン地域の取り組みをみてまいりました。
「大学の集積」から「地域のイノベーション・エコシステム」へ
フランスでは2000年代以降、パリへの一極集中を避け、各地域が固有の強みを持つ産業・研究クラスターを形成する政策が進められてきました。その代表的な仕組みが「競争力拠点(Pôles de compétitivité)」です。2023~2026年の第5フェーズでは55拠点が認定されており、研究機関、大学、企業、スタートアップ、医療機関、行政等を地域単位で結び、研究開発から事業化、国際展開までを促進する仕組みとして機能しています。リヨン地域では、ライフサイエンス・ヘルスケアに加え、化学、材料、モビリティ、デジタル技術など多様な産業基盤が形成されています。
今回の訪問を通じて強く感じたのは、リヨンが単なる「大学・研究機関の集積地」ではなく、大学・病院・企業・行政・Living Lab・スタートアップが相互に接続された地域全体のイノベーション・エコシステムとして機能していることでした。
東北大学とリヨン――20年以上にわたる国際連携の基盤
東北大学とリヨン地域との関係は、新しいものではありません。2004年には東北大学とINSA Lyonとの間にリエゾンオフィスが設置され、その後、研究者・学生交流や共同研究が継続的に発展してきました。2008年には、東北大学、CNRS、リヨン大学、INSA Lyon等による共同研究の枠組みとしてELyT Labが設立され、材料科学・機械工学を中心とした研究連携が進展しました。さらに2016年には、国際共同研究ユニットとしてELyTMaX(Engineering Science Lyon-Tohoku for Materials and Systems under Extreme Conditions)が設立され、2018年にはリヨン側にもELyTMaXの拠点が開設されました。この連携は、研究者交流だけではなく、ダブルディグリー、若手人材育成、国際共同研究、産学連携へと発展しています。
今回の訪問では、この20年以上にわたる関係が、今後は医療・ヘルスケア、バイオデザイン、Living Lab、医療機器、デジタルヘルス、スタートアップ等へ広がる可能性を改めて実感しました。
リヨンでの大学・病院・研究機関との対話
今回の滞在では、バカンスから戻られていない方も多くいらっしゃる時期での訪問となりましたが、 INSA LyonおよびELyT Globalの先生方を中心に、公的機関、 リヨン第一大学(Université Claude Bernard Lyon 1) 、 セントラル・リヨン大学(Université de Lyon/École Centrale de Lyon関係者) 、Hospices Civils de Lyon(HCL) 、 Mines Saint-Étienne、 Laboratory of Biomechanics and Mechanics of Shocks(LBMC)、はじめ、多くのみなさまからお力添えをいただき、多くの知見をいただくことができました。改めて感謝申し上げます。
東北大学病院臨床研究推進センターバイオデザイン部門・産学連携室では、こうした国内外のエコシステムとの接続を通じて、医療現場から生まれる新しい価値を社会へ届けるための取り組みを進めていきます。






8月21日
東北大学病院 教授(産学連携室)デザインヘッド
東北大学病院 臨床研究推進センター バイオデザイン部門長
東北大学 副理事(国際共創担当)
中川 敦寛
